新編『ぐるりんりん』より⑤~わに泳ぎ~(第3稿)
新編『ぐるりんりん』より⑤~わに泳ぎ~(第3稿) 作・曵田原 宏
※年少組向けの8つの短いお話です。
どのお話から読み始めても次のお話につづきます。
だからこのお話は8つまるごとで『ぐるりんりん』という循環童話です。
1 おむすび (第3稿)
2 おむすび屋さん (第4稿)
3 くまの家族のおふろ (第4稿)
4 わにの背中で (第4稿)
5 わに泳ぎ (第3稿)
6 でんしゃごっこ (第2稿)
7 おおなわとび (第4稿)
8 青い帽子 (第2稿)
今回は5/8 第5話 わに泳ぎ (第3稿)
ある日ワニのワニイが気持ちよさそうに川を泳いでいました。
ワニイは自分でもうっとりするほど泳ぐのが上手でした。
あんまりうっとりして眠くなり、居眠りしたまま泳ぎました。
居眠りしていても上手に泳げるのです。
ごっつん。
ワニは誰かのボートにぶつかりました。
「いててて」とめをあけると
ぐらぐら揺れているボートには
黒猫のミャーと白ウサギのピョンが乗っていました。
「あぶないじゃないかワニイ」
「こわいじゃないのワニイ」
「いやあぁ、ごめんごめん」
「こんどからきをつけてよ」
ワニイは後ろ脚だけで立ち泳ぎをして
頭の先から胸まで水の上にのりだして
「はい、きをつけます。ごめんなさい。」
ぺこりとおじぎしました。
ミャーとピョンはまたボートを漕ぎだしました。
ワニイはボートと並んで泳ぎながら
「なかなか上手にボートがこげるじゃないか」
「だっていっぱいれんしゅうしたんだもの」
「だからこんなにじょうずになったんだよ」
「なるほど。それじゃあこんどは川の水の中にはいって
およいでみないかい? きもちいいぜ」
「だってあたしたち・・・ねぇ~。」
「そうだよぼくたち・・・なぁ~。」
「だってってどうなのさ?」
「だぁ~って。」
「だぁ~って、なんなのさ?」
「およげないんだもの」
「わっはっはっはっはぁはあ」
ワニイは大きな口をあけて大笑いしました。
「よっしゃぁ。おいらがおよぎかたをおしえてやるよ」
ワニイはボートを川岸に押し上げるといいました。
「おいらのまねっこでっきるっかな?
まずは、ワニワニたいそうーっ。はじめ!
わにわにさんしぃ、わにわにさんしぃ…」
みゃーとぴょんはワニイのまねをしました。
ワニイは川原の砂の上に腹ばいになると
せなかを くねくね おしりを ふりふり
あしを もにょもにょ かきかき しました。
ミャーとピョンはワニイのまねそっくりに体を動かしました。
「はーい、そのまま、そのままぁ。
すなのうえをもぞもぞもぞぉお。
かわのなかにちゃぽん。すーいすーいすーい」
みゃーとぴょんはワニイとおんなじように砂の上をもぞもぞ、
川の中へちゃぽんとはいりました。
するとどうでしょう。あらあらふしぎ、まぁふしぎ。
みゃーもぴょんもすーいすーいすーい。
実に見事なワニ泳ぎです。
さんびきは川の中をあっちへす―いす―い
こっちへすーいすーいと泳いで遊びました。
~お・し・まい~