スプーンとごはん茶碗 (次男坊からすの恩返し その5)
スプーンとごはん茶碗 (次男坊からすの恩返し その5)
足腰が弱り自立できなくなった母は一日の大半をベッドですごしています。
食事の時は家族のものに介助されてベッドの端に腰かけ、ベッドサイドにテーブルを引き寄せ食事をします。
本来母の利き腕は右なのですが骨髄腫を体験していて現在右腕が痛くて殆ど使えません。
したがって食事は左の手にスプーンをもってぎこちないながらも操作して食事します。
右手は器に手を添えられないまま右ももの上です。
本来の利き手ではない左手にスプーンをもってご飯やおかずを掬うのですが持つ柄を水平に保てないのでスプーンが身体の向こう側に傾きせっかく掬った食べ物も口元に持っていく直前にぽろっと落ちることがしばしばでした。
母用のスプーンをどこかで誂えてこよう。
次の食事の時には柄の部分が丸棒のスプーンを用意してみようと心ワクワクしながら買い物に出ました。
介護用品のお店に行く前にひとまずダメもと覚悟で100均ショップを覗いてみました。
私は普段から「100均ショップ」に足繁く通う人間ではないのですが入店してみて品揃えの豊富さに驚きました。また品質もなかなか良いものが揃っていました。
「スプーンを探しているのですがどの辺に陳列してますか?」と店員に尋ねると丁寧に教えてくれました。
材質でいうと竹製や天然木のカレースプーンのようなもののほうが私の好みなのですが、これらはみな匙の部分が肉厚なので母が操作するに難易度が高いです。
そこで匙の部分がステンレスのものを選びました。
私のイメージでは柄の太さが20ミリくらいのものがないだろうかと物色してみたのですがありませんでした。
デザートスプーンの列に12ミリくらいの丸棒の柄のものがありました。
淡いピンクの樹脂のものに白いドットがかわいいです。これに決めました。
さて次は「ごはん茶碗」です。
いろいろな形・色柄・重さの陶器や磁器のものが驚くほど豊富にありました。
母の腕力を考えると重さはなるべく軽いものをと考えました。
けれどもプラスチック製や樹脂製のものは避けました。
母の座高や食事する環境を考えながら品定めをしました。
器の高さはなるたけ低くて器の中をのぞきやすいもの、ヘリは立ち上がりがわりとはっきりしていてスプーンで掬っていくときに匙の上に乗っけやすいものがベストです。
「ごはん茶碗」って器の高さ直径がだいたい決まっているようです。
そこで発想を変えてみました。
「ごはん茶碗」でなく「小鉢」の類の陳列棚に目を移しましたら、ごはん茶碗の高さの半分強位、直径は二回りくらい小さめ、重さも程よい重さです。
その日のおひるごはんからこのスプーンと茶碗を使っての食事介助をしました。
器の使い勝手が向上し、食べようとする意欲が高まりました。
「たべやすくなったでしょ」「うん」
ちょっとずつ改善して自力で食事する残存能力のアップを工夫していきます。