donpo9’s blog

脳卒中を体験した人の生活の楽しみ具合レポート

王様の新しい服2019 第3回 (3/3)

王様の新しい服 2019 The Emperoe`s New Suit  第3回 (/3)

 

 

原作 ハンス・クリスチャン・アンデルセン  

朗読台本  脚色 曵田原 宏  

 

 

詐欺師はまず布をはた織り機から外すふりをしました。

そしてハサミでショキッショキッショキンと切る真似をして

糸のついていない針で 

チクチクツンツン チクチクツンツン

チクチクツンツン チクチクツンツン

縫い上げ服を完成させました。

「♪ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラパッパッパー♪

たった今、王様の新し服が出来上がりました!」

その知らせに王様と大臣全員が大広間に

ざわざわ そわそわ どきどき と集まりました。 

 

詐欺師はあたかも手のひらの中に服があるかのように披露しました。

「あ~皆様、まずはズボンです。」

「は~い、続きまして上着です。」

「え~最後に…」

「マントです!」

「これらの服はクモの巣よりもはるかに軽いのです。」

「まるで何も身に着けていないように感じる方も

大勢おられるでしょう。 けれども、 世にも珍しいこの服が

『特別で、価値がある』という理由がまさにここにあるのです。」

二人の詐欺師は誇らしげに宣言しました。

「なるほど。確かにその通りだ。!」

みんなは声をそろえて感心しました。

とは言っても本当のところは何も見えていません。

もともとそこには何もないのですから。

ノッポの詐欺師が言いました。

「どうか王様、ただいまお召しになっているお洋服を

お脱ぎになってくださいませんか?」

デブの詐欺師もたたみかけるように言いました。

「よろしければこの大きな鏡の前で

王様のお着替えをお手伝いさせていただきたいのです。」

王様は身も心も軽やかに うきうきと服を脱ぎました。※♪小さな喫茶店

タラタ タッタン タターララッタン タターララッタン タターラ上着も    

タラタ ラッタン タターラ チョッキも タターララッタン タターラスカーフも

タタラ ラターラ タッタララッタ ラッタン タターラタラ タラララベルトも

タラタ ラッタン タターララッタン タターララッタン スッポンポンのポン 

ズボンも靴下もなにもかも

ぱっぱっ ぱぱぱと脱ぎ捨てて

瞬く間にパンツ一丁になりました。 

 

二人の詐欺師は

あれやこれやと新しい服を着つけるふりをしました。

着替え終わると王様は あっちからもこっちからも

鏡に映る自分の姿を興味津々覗き込み

実に満足そうに大きくうなずきました。

「な な なんと美しい!……よくお似合いです、王様。」

「この世のものとは思えないほどの美しさ。」

「色合いも、模様も、言葉ではとても言い表せません。」

「まさに素晴らしい服で目がくらくらしてしまいます!」

その場にいた誰も彼もが口々に褒め讃えました。

 

その時パレード係の隊長がやってきて王様に言いました。

「パレードの用意が整いました。」

「うむ、予も身支度は す・べ・てぇ~え おわったずぉ~~お。

どうだぁ皆の者、この服は予に似合っておるかな?」

王様は鏡の前で

バレリーナのようにクルッと鮮やかに回って見せました。

なぜなら王様は自分の服に

見とれているふりをしなければならなかったからです。

ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラ パッパ ダー

ラッパラパッパ ラッパラパッパ ラッパラ パッパ ドォヴァー

ズンツッツッツッツッツン 

ズンツッツッツッツッツン         ※♪ボレロのリズム♪

いよいよパレードの出発です。

お付きの召使はありもしない服の裾を軽やかに持ちました。

王様はきらびやかな天蓋の下、威風堂々と行進していきました。

 

街の人々は通りや窓から王様を見てこんな風に叫んでいました。

「ひゃぁ新しい王様の服は、  なんて…なんて珍しいのでしょう!」

「それにあの長い裾と言ったら、本当に良くお似合いだこと」

誰も彼もが自分には新しい服が見えないということを

気づかれないようにしていました。

今の仕事は自分にはふさわしくないだとか

自分は馬鹿だとか思われたくなかったからです。

「でも、おうさま、はだかだよ」

突然、小さな子供が王様を指さして言いました。

「だって、おうさま、はだかだよ。

おなかのまわりのお肉がプルンプルンしてるし」

「なんてこった!ちょっと皆の衆聴いておくれ、

無邪気な子供の言うことなんだ。」

横にいたその子の父親が思わず叫びました。

子供の言ったその一言が街中の人々の間に

ひそひそ ざわざわ ぞわぞわぞわぁあ っと伝わっていきました。

「おいっ、おうさまははだかだって・・・よ。」

「え?王様がどうしたってぇ?」

「おうさま は・・・はだか」

「はっ・だっ・かぁあ?」

「うん。はだか!」

人々は面白がって口々に言いました。

「王様は はだかだ」

「王様は はだかだ」

「王様は はだかだ」

ついに人々は大きな声で一斉に言いました。  せ~の。

「おうさまは は だ か だ」

王様は大弱りでした。

王様だってこの時にはすでに判りきっていたのです。

みんなの言うことのほうが間違いなく正しいと。

《でも、今更パレードを止めることなどできるものか》

と、そのまま、今まで以上にもったいぶって歩き続けました。

召使は仕方なく、ありもしない裾を持ち続け

恥ずかしそうにうなだれて

王様のあとをしょぼしょぼ歩いていきました。

 

 

ふと見上げると

どこまでも青い空に白い雲が一つ、

ぽっかりと 浮かんでいました。

                       

                     (おわり)