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脳卒中を体験した人の生活の楽しみ具合レポート

王様の新しい服2019 第1回(1/3)

 王様の新しい服 2019 The Emperoe`s New Suit   第1回 (1/3)

 

 

原作 ハンス・クリスチャン・アンデルセン  

朗読台本  脚色 曵田原 宏  

 

昔むかし、とある国のあるお城に王様が住んでいました。

王様はピカピカの新しい服が大好きで

服を買うことばかりにお金を使っていました。

王様の望むことといえば、いつもきれいな服を着て

みんなから「いいなぁ」と言われることでした。

戦争なんて大嫌いだし お芝居だって面白くありません。

好きな服を着られればそれだけでいいのですから。

新しい服ならなおさらです。

一時間ごとに服を着替えて、みんなに見せびらかすのでした。

お城の周りには町が広がっていました。

とても大きな町で、いつも活気に満ち溢れていました。

毎日大勢の人々が世界中のあちこちから訪れました。 

ある日、デブとノッポの二人の詐欺師が町にやってきました。

二人は人々に、『自分たちは布織職人だ』と嘘をつきました。

それも 世界で一番素晴らしい布が折れるのです とふれ回りました。

デブの詐欺師は言いました。

「とてもきれいな 色合いと模様 をしております。

…が、私たちの織る布は特別なのです。」

続いてノッポの詐欺師は言いました。

「自分にふさわしくない仕事をしている人と、

馬鹿な人には、透明で見えない誠に不思議な布なのです。」

その話を聞いた人々はたいそう驚きました。

たちまち大変な噂となりました。

すぐに噂は王様の耳にも入りました。

「うひょひょひょひょ そんな布があるのか。わくわくするわい。

もし予がその不思議な布でできた服を着たならば一体どうなるかな?

たちまち家来の中から役立たずの人間や、

馬鹿な人間を一人残らず見つけ出せる…とこういう訳だ。

そして服が見える賢いものだけを集めれば、この国は今よりもっと

栄えるに違いない。…ふむ…、早速その布で服を作らせよう。」

王様は詐欺師をお城に呼びつけ命令しました。

「今すぐ服を作るように」 と。

詐欺師たちは喜んで引き受け、すぐに仕事に取り掛かりました。

宿屋に はた織り機を二台並べると、

調子のいい音を響かせて

カラッカラ ポシャー トントンクリック

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ところが、はた織り機には何もありません。

糸の一本もかけてありません。

それでも、詐欺師たちは一所懸命、布を織っています。

いいえ、本当は布などどこにもなくて、

からっぽのはた織り機をひたすらカタカタさせて

『布を織るふり』をしているだけなのです。

それが証拠に布を織るふりの音をよくきいてごらんなさい。

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ときどき、「この国で一番高い絹糸と金でできた糸をください」

と王様に願い出ました。望みどおりに材料が手に入ると、

はた織り機には使わず、自分たちの旅行カバンにしまい込み、

そして再びからっぽのはた織り機に向かって

夜遅くまで灯りをつけて、働いているふりをしました。

町中が、朝から晩まで王様の作らせている布の話でもちきりでした。

町の人々は、自分の周りで いったい 誰と誰と誰とが馬鹿なのか、

一刻も早く知りたくてうずうずしてきました。

 

何日か経つと王様は、どれ位布が織り上がったか知りたくなりました。

直接自分の目で確かめに行けばよいのですが、

万が一にも、布が見えなかったらどうしましょう。

自分は王様にふさわしくないバカ者だということになります。

とはいえ何といっても王様は王様です。

こんな布など怖がる事はないのですが、確かめに行く勇気が出ません。

そこで自分の代わりに年寄りの大臣に詳しく調べさせ、

布がどうなっているか報告させようと考えました。

この大臣はとても頭が良くて『正直者』で通っていましたから、

間違いなく布を見ることができると思ったのです。

年寄りの大臣はすぐに詐欺師の仕事場へ向かいました。

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大臣は暫く戸口の外に立って聞き耳を立てました。

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はた織り機の音だけが部屋の中から聞こえてきます。

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年寄りの大臣は 『神様、助けてください!』

と祈りながら、ゆっくりとドアを 開けました。

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汗だくになってはたを織っている詐欺師たち。

わき目も振らず眼を三角にして織っています。

額の汗が眼に入るのでしょうか、時たま顔をしかめたり

鼻をムズムズしながらも、手は休めずに一心不乱に織っています。 

大臣は両眼を大きく見開き はた織り機を見ました。

けれども何も見えません。

目を細めてもう一度見ましたが、

やはり、はた織り機には何もないのです。

《…ど、どういうことじゃ?》

と出かかった言葉をゴクンと飲み込みました。

その時 デブの詐欺師が

「大臣さん。どうです?さあさあさあ、

もっと近づいてよく見てください。

なんといってもこの色合いの奥ゆかしさ。

あでやかなこの模様。

いろいろな技術が使われていて見事でしょう。

思わずうなってしまう出来栄えでしょう。」

詐欺師はそう言って、からっぽのはた織り機を指さします。

大臣は眉毛を上げたり下げたり、目をシパシパさせたりして

何とかして布を見ようとしましたがどうしても見えません。

大臣はつぶやきました。

《こりゃ大変なことじゃ。もしかして私は馬鹿なのだろうか》

でも断じてそうは思いたくありません。

大臣は目立たぬように深呼吸を一つすると周りを見廻しました。

気が付けば部屋の中にいるのは自分と二人の詐欺師の三人だけです。

《そうか、自分から見えないとさえ言わなければよいのじゃ》

ノッポの詐欺師が急に問いかけました。

「あのぉ~、どうしてなにもおっしゃらないのですか?」

「ああ・・・ふぅん。とっとっ とてもきれいでたいそう見事な布じゃなぁ。

この色艶の鮮やかなこと!それになんと見事な模様じゃ。

このことを王様に報告すれば、さぞかしお気に召すことじゃろうなぁ。

・・・はぁ。」

                        (つづく)