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脳卒中を体験した人の生活の楽しみ具合レポート

新編『ぐるりんりん』より⑧~青い帽子~(第2稿)

新編『ぐるりんりん』より⑧~青い帽子~(第2稿) 

                 作・曵田原 宏

 

 

※年少組向けの8つの短いお話です。

どのお話から読み始めても次のお話につづきます。

だからこのお話は8つまるごとで『ぐるりんりん』という循環童話です。

 

1 おむすび        (第3稿)              

2 おむすび屋さん     (第4稿)              

3 くまの家族のおふろ   (第4稿)          

4 わにの背中で      (第4稿)              

5 わに泳ぎ        (第3稿)              

6 でんしゃごっこ     (第2稿)              

7 おおなわとび      (第4稿)             

8 青い帽子        (第2稿)             

 

 

今回は8/8 第⑧話  青い帽子  (第2稿)

 

 

青い帽子がありました。 

すべりだいのてっぺんにちょこんとありました。  

誰かが脱いで置き忘れたのでしょうか?

それとも落とし物に気が付かないで

置いてきぼりにされたのでしょうか?

黒猫のミャーとうさぎのぴょんがやって来ました。

「あれ、こんなところにあおいぼうし」

「まあ、きれいなあおいろ」

「ねえ、ぼうしくん、どうしてこんなところにいたの?」

帽子は返事をしません。ちょっぴり寂しそうにうつむいています。

「きっとだれかのわすれものだよ」

「それとも、もしかしたらかぶっていたひとが

おっことしたのにきがつかないでおいてきぼりになったのかも」

「それとも、どこかからにげだしてきたのかも」

「おおかぜがふいて、ぴゅーってとばされちゃったのかも」

「それとも、どろぼうがよなかにやってきてぬすんできたのかも」

「それとも、おばけが・・・」

帽子はなんにも言いません。小さな溜息を一つしただけです。

「ぼうしのひといまごろどうしているだろう」

「どっかいっちゃったよーってないているかな」

「あちこちいっしょうけんめいさがしているかも」

「こうえんのベンチのとことかすなばとかブランコのとことか」

帽子はやっぱり黙っています。

「そうだ、ぼうしのもちぬしをさがしにいこう。」

ミャーは青い帽子をちょこんと頭にかぶると歩き出しました。

「どうだい、ぼくににあうかい?」

「なんかかっこいね」

帽子はちょっとすまし顔。

「こんどはあたしにもかぶらせて」

「はいどうぞ」

ウサギのぴょんがちょこんと頭にかぶりました。

帽子はなんだかちょっぴり楽しそう。

「え~、ぼうし~。ぼうしをおとしたひといませんかぁ~」

「あおいすてきなぼうしです。

すべりだいのうえにありましたぁ~」

「ぼうし~。ぼうし~。ぼうしのおとしもので~す」

「ぼうし~。ぼうし~。ぼうしのおとしもので~す」 

公園の向こうの方から誰かが来ました。

青い半ズボンと青い靴を履いたミギー坊やです。

あたりをきょろきょろして何かを探しながら歩いています。

「ぼうし~。ぼうし~。ぼうしのおとしもので~す」 

「ぼうし~。ぼうし~。ぼうしのおとしもので~す」

黒猫のミャーとうさぎのぴょんの声が聞こえたのでしょう。

息を弾ませ まっすぐにこっちに走ってきました。

「あ、それぼくのぼうしだ。」

「はいどうぞ」

「みつけてくれてありがとう」

「ぼうしさん、よかったね」

ミギー坊やは帽子をキュッとかぶりました。

帽子はとっても嬉しそうににっこりました。 

 

                  ~お・し・まい~